2012年1月21日土曜日

R.I.P SOPA & PIPA(と願う)

昨日報じられたとおり、著作権保護のために米議会が成立を目指していたSOPA、PIPA法案は、採決が延期されることになった。

昨年、この法案の存在が浮上したとき、フェイスブックやメールで、「反対しよう」というメッセージがちょろちょろ来るようになったけれど、話題になっていたのもかなり限定的な感じだったので、どうせするっと通ってしまうんだろうと漠然と思ったのを覚えている。

シェアやフリーミアムの概念、それからソーシャルネットワークをうまく使っている企業と、そうでない企業のギャップはどんどん大きくなっているような気がするが、それはさておき現行の法律で「著作権侵害」とされている行為を処罰する法律を作りたい、というところはまあわかるとしても、SOPAとPIPAの最大の問題は、著作権を侵害するコンテンツを含むサイトを、取り締まる側が裁判所の判断などを仰がずにブロックすることができる、というポイントである。こういうことを許してしまうと、インターネットの検閲になりかねないと懸念するのは当たり前のことである。

この数週間、かなり抗議運動が活発になってからも、音楽業界がナプスターを潰そうとしたときを思い出してすっかりデジャブ気分で、シェアやフリーミアムといった概念がすっかりリアリティの一部になった今、またまた何を言っているんだろうとあほらしい感じを抱きつつ、でもSOPAとPIPAを支持する団体や会社のリストを見たら、反対していたグーグルやフェイスブックの力がいくら大きくなったとはいえ、さすがの大連合には負けてしまうのではないかとやきもきしていた。

18日のブラックアウトについても、たとえばウィキペディアが24時間サービスを停止したからといって、どれだけ効果があるんだろうかと思っていたのは私だけではないと思う。ツイッター社のCEOディック・コストロのように「バカバカしい」とはっきり表明しなかったとしても。
でもあの日、どういうわけかどこかのポイントで流れが変わった。
ウィキペディアに行って、自分の郵便番号を入力し、自分の地域の議員事務所のサイトやメールアドレスを手にいれて、抗議の意を表明した有権者たちのパワーは、いくつかの議員事務所のサイトをダウンさせるに至った。
そして、最終的には、採決延期に至ったわけです。
インターネット上の運動が政治の流れを変えた。これはなかなかにすごいことだ。

採決延期が発表になった直後、ツイッターやフェイスブックを見ていたら、droppedという言葉を使っていた人や媒体もいたけれど、そうではなくて、あくまでも延期、法案の内容を見直してもう一度チャレンジするということである。
だからまだ安心はできない。
しかも、アメリカでの流れが国際的な流れに及ぼす影響は大きいわけだから(特にエンターテイメント業界まわりでは)、日本にとっても他人ごとではない。

一連の流れを見ていて、つくづく思ったのは、リソースとエネルギーのムダだよなということである。
この間、日本で自炊業者を訴えた作家の先生方の記者会見を見ても思ったけれど、著作権の侵害がけしからん、と思うのはまだわかる。でも、それを全部取り締まるのは不可能なのです。
それよりネットでコンテンツが有機的に拡散していくことをうまく使って商売したほうがよっぽど効率がいいと思う。
この騒動の最中に、VICEがおもしろい記事を出していた。
法案を提案したラマー・スミス議員が、自らのキャンペーン・サイトでクリエイティブ・コモンズ扱いの写真を撮影者に無断で使っていた、というネタである。
それだけじゃない、法案を支持した議員のなかには他にも写真などを無断で使っていた例がいくつもあったということもわかった。
冗談みたいな話だが、まさに今の世の中のリアリティである。
ご本人たちが、この皮肉をわかっているかどうかは謎だけれども、この現実を受け入れて、SOPAとPIPAはこのまま闇に葬り去ってほしいものである。