2010年7月19日月曜日

Viral Marketing の実例:怖いのと楽しいのと。

先日、ツイッターを使いはじめて、すっかりブログ更新の頻度が落ちていることをお友達に指摘されました。
そもそも、ブログは、雑誌には書く場所がないようなことを書きたくて始めたものなのだが、ツイッターをやっていると、そのフラストレーションがある程度は解消されるし、どうしても微視/ミクロにとらわれて、巨視を忘れがち。
というわけで、今日は、何か書きたいことなかったっけ、と考えてみました。

最近、考えていたのは、Viral Marketing (英辞郎には「口コミによる商品の市場浸透・拡大を狙うマーケティング手法」と書いてある)の威力について。
ここしばらく、ツイッターってどうなの?と聞かれると、特にデザイナーとかアーティストとかミュージシャンの友達には、やったほうがいいよ、とすすめてきた。
ツイッターが絶対というわけではもちろんないけれど、やらないよりはやったほうがいいし、うまくやれば、それなりの自分マーケティングになるから。
が、勧めたはいいけれど、Viralという現象を引き起こすにはそれなりの何かが必要なわけで、それを引き起こすにはどうすればいいか?という疑問にはまったく答えられないのです。

なんてことを考えていたら、今、11歳の女の子の「イジメ」問題がネットで話題になっている。
そもそもの発端は、彼女が自分で作ったビデオが発端。
かわいいんだけど、まあ口は悪いし、生意気だし、確かに見る人によっちゃ腹が立つかもしれない。
それで、ネット上でのいろいろな嫌がらせがはじまり、それに対して、彼女が泣いてるうしろで、お父さんが怒り狂うビデオがYouTubeに登場したりして、その様子は明らかに真剣なんだけど、ちょっぴりコミカルに見えなくもないので、170万ヒット(この数字はGawker.comから)をたたき出した(このビデオはもう削除されてます)。
しかしここからは笑えない。
どういうわけか、この家族の電話番号やら住所やらがネットに流出し、警察を巻き込んでの大騒ぎに発展している。
恐るべし、Viralの威力。

で、Gawker.comによると、この情報流出の舞台になったアウトレットのひとつが4chan.orgというサイト。
私も初めて知ったのだけれど、2ちゃんねると名前が似てるのが気になる、と思ったら、日本語の説明がついているではないですか。
そして、11歳の女の子の事件をレポートしていたGawkerの記者のパーソナルインフォーメーションを暴露しているという。
Gawker の記事によると。
なんか恐ろしいな。これ。
こういうことが自分に起きたらって思うとぞっとする。

しかし、今日はいい話も発見した。
友達が見せてくれたビデオ。


明らかにキメキメって感じの男性が、二重に現れた虹を見て、感動している。
今日はこのビデオで大爆笑させていただいた。
これ、今みると560万ヒット以上たたき出して、しかも、この彼の声をサンプルしたバンドまで登場した。


これ、iTunesでも大ヒットしちゃって、一説によると(あくまでも噂ですが)、1日にうん百万という大金をたたき出して、もとのビデオを撮った彼とバンドで山分けしているらしい。
うーん、いい話だ。
今日は、この話でちょっと楽しい気持ちを味わったのでありました。

2010年7月8日木曜日

カリム・ラシッドが考える「デザインとアートの違い」

今月(っていっても6月だけど)も無事に校了しました。
今月楽しかったのは、ポール・セヴィニー(クロエの兄)のインタビュー(GQに出ます)や、カリム・ラシッドのお宅訪問(こちらはヴォーグに)。

カリム・ラシッドには、たまにインタビューなどでお会いする機会があるのですが、この人と会うのは本当に楽しい。
カリムのことは、ピンクのシャツ着てて、ピンクの商品ばかり作る派手なお人、もっというとちょっとキワモノ、と思っている人も多いと思うのだが、話をすると、すごく哲学的なお人であります。
今回はお宅訪問ということで、お家の話をひとしきりしたあと、雑談になった。

「最近、アートとデザインの境界が曖昧になってるってよく言うけど、僕はあの考え方は苦手なんだよね」
とおっしゃる。
「僕は自分のこと、デザイナーだと思っているけど、アーティストだって思ったことはないんだ。
デザインは、アジェンダがあって、依頼があって初めて成立する。依頼してくれる人がいなかったら僕は成立しない。アートに制約はないでしょう?
依頼があって成立するものと、自由に創作するものを、『境界線が曖昧』っておかしいよね?どっちがいいとか悪いとかじゃないんだけど、やってる側が、そこを見誤るのはどうかと思う」
って。
なんか、こういう意見、新鮮。
アートとデザイン、ファッションとアート、みたいなクロスオーバーがはやって久しいけれど、どれだけ境界線が曖昧になっても、スタート地点の違いはわかっておいたほうがいい気がします。

ちなみにカリムは、制約と依頼がある中でモノを作るのが好きなんだそうな。
カリムのワーカホリックぶりはちょっと知られたものであるが、今までデザインしたモノは3000個以上。
高い家具やインテリア小物も多いけれど、よくドラッグストアに売ってるMethodという洗剤のシリーズや、掃除機なんかもデザインしている。
「年をとってきたせいかもしれないけど、賞をもらったような商品より、スーパーに並んでいるようなモノに思い入れを感じるようになってきた。ものすごい田舎の普通の家庭で使われてると思うのが一番うれしい」
と言っていた。

そして、もうひとつカリムがストイックなところ。
それは「なるべく消費しない」ライフスタイルの実践なのだが、こちらは原稿に書いちゃったので、詳しくは月末に出るヴォーグで見てください。
私もやってみよう、と思ったけど、なかなか難しいのである。