2010年10月11日月曜日

トム・ブラウンという人



もうちょっと前に書こうと思っていたエントリー。
9月末に発売になったターザンで、NYデザイナーのトム・ブラウンにランニングについてインタビューした。

メンズのファッションが好きな人なら知ってると思うけど、ニューヨークのメンズシーンを変えた人である。
初めて会ったのは、私もフリーになったばかりだった2003年、コレクションを発表する前だった。
それから毎シーズン2度ずつくらいのペースでインタビューしてきた。
多いときには週に2回なんてこともある。
ファッション以外のいろんな特集にも出てもらってきた。
あまりに私がしょっちゅう登場するので、本人に「会わなくても書けるくせに」とか言われるくらいである(もちろん冗談です)。

トムが登場してから、ニューヨークのメンズシーンは本当に大きく変わった。
「メンズの不毛地帯」から、イキのいいデザイナーが群雄割拠する活気ある都市に変貌した(今はピークを過ぎてしまったかもしれないけれど)。
NYコレクションにやってこなかった世界中の男性誌のエディターさんやスタイリストがやってくるようになったことを考えると、NY市に表彰されてもいいくらいだ。
そして、「NYのストレートの男性が身だしなみに気を使うようになった」理由が語られるとき、必ず名前の出てくる存在だってことを考えると、世の女性たちにも感謝されてもいいと思う。
そういう意味では、ファッションという枠を超えて爪あとを残した人なんだと思う。いまさらだけど。

ま、それはさておき。
トムは正直、口数が多いほうではないので、インタビューの相手として、決して簡単なタイプじゃない。
が、やっぱり会えば会うほど味が出る。
その「味」の部分が、ファッションの話だけだとなかなか出ないのが、原稿を書きながら、ずっと気になってきた。
そんなフラストレーションがちょっと解消されたかなと思います。
「走り」についての長いインタビューを通じて、トムの人となりがちょっと伝わったかなと思うから。

まだ伝えきれてない部分はもうひとつある。
トム・ブラウンのものすごく反抗的で、パンクな部分である。
いくらぴたぴたの過剰なシルエットとはいえ、「スーツなんか着ちゃってるから、誤解されるんだよね」と本人も言っていた。
でも、社会に対する反抗的な精神がなかったら、あんな時代(アメリカ人男子がドットコム・カジュアルで会社にいってた)に、あんなスーツのコレクションは発表できなかったと思う。
そのうち、トムのそんな一面を奥深くまで探る機会があるといいけれど。

2010年10月6日水曜日

心配してくれたみなさんへ。


先週、愛犬ウィスキーが事故で亡くなりました。

そもそもウィスキーがうちにもらわれてきたのは2002年。
こんなライフスタイルで犬を育てるのは無理!という私の反対を押し切って、当時のパートナーがもらってきてしまった子犬でした。
反対はしたものの、やってきてからは私も当然ウィスキーにめろめろになり、一人になってからもずっと育ててきました。

ウィスキーはものすごく手がかかる犬でした。
日本語では暴れん坊将軍、英語ではhandfulと形容されていました。
頭がいいので、クローゼットのドアを開けて中身を引きずりだしたり、冷蔵庫を開けることを覚えたり、机によじ登ってコンピュータをさわったり・・・
つくづくしつけに失敗した、と頭を抱えることもしばしばでした。
どんなに忙しくても、エネルギーのありあまったウィスキーを毎朝毎晩散歩させることが辛くなったこともたびたびありました。

ここ数年は、都会にばかりいてはいけないと、なるべくいろんなところに連れていきました。
都会しか知らなかったウィスキーは、初めは自然にとまどっていたけれど、だんだん慣れて、苦手だった泳ぎを克服し、リードなしで走りまわることを覚えました。
屋外のショーにもたくさんいって、たくさんの人にかわいがってもらいました。

今、お別れがあまりに急にやってきて、みんながウィスキーは幸せだったねと言ってくれるけれど、悔やまれることは多々あります。
そのなかでも一番大きいのは、さんざん人間の(私の)都合で振り回してきてしまったということ。
私がパートナーと別れたり、出張にでかけたり、引越したり・・・・そのたびにいろんなところに預けられたり、連れまわされたりしてきたわけです。
そういうことを思い出しては、悪かったとか至らなかったとか思っています。
しょうがないっていえばそうなんだけど、やっぱりペットって不憫だ・・・

たくさんの方にご心配いただき、びっくりするくらいの数の電話/メール/テキスト/ツイッターをいただきました。
こちらから言わないのに、締切りを伸ばしてくれた編集者もいました。
慰めるつもりで電話をくれたのに、私より泣いてた友達もいました。
昨日は、玄関にスマイルマークのついたケーキがおいてありました。
最初の何日かは、おくやみを言われては泣き、知らない犬を見ては泣き、店先の「犬お断り」のサインを見ては泣き、という感じでしたが、もう大丈夫です。

ウィスキーは友達の好意で、桜の木の下に埋めてもらいました。
ほんとに幸せな犬だったと思うよ。
と、なんだかものすごく犬バカなエントリーになっちゃったけど、心配してくれた人へのお礼の気持ちをこめて書きました。
ほんとにみなさん、ありがとう。