2012年1月12日木曜日

映画「東京原発」と市民投票

先日、ある方「東京原発」という映画のDVDをいただいた。
2004年に作られた映画である。



原発がらみの映画といえば「チャイナ・シンドローム」。こんな邦画が作られていたのも知らなかった。
邦画には相当疎いほうなので、まわりの人に聞いてみたけれど、知らない人が多かった。

役所広司扮する東京都知事が、逼迫する財政を立て直すために、東京に原子力発電所を誘致する(それも新宿中央公園に)と言い出して、スタッフを唖然とさせる。喧々諤々の会議で原発誘致の是非を論じていると、フランスから極秘裏に運ばれてきたプルトニウム燃料を載せたトラックが、爆弾マニアの少年にハイジャックされる、というあらすじ。
ストーリー展開には非現実的なところもあるし、あくまでもエンターテイメントではあるのだが、都のスタッフが喧々諤々やっている間に語られる内容には、どうやってこの国に原子力発電が導入されたかとか、環境問題とのからみとか、昨年の震災以降焦って学んだようなことが素人にもわかるように解説されている(多少のバイアスはあるにしても)。

ネットでいろいろ読んでいたら、多くのページに「2002年に制作され、公開が危ぶまれたが2004年に公開にこぎつけた」というようなことが書いてある。
これはどこからきたんだろうといろいろ見てみたが、出所がわからない。
しつこく探したらなんのことはない、映画の公式ページであった。
この公式ページには「原発基礎用語」集なんてものもついている。
去年の震災以前の世界に、映画を通じて原発について啓蒙しようという努力が行われていたのか、、、

役所広司以下、段田安則、平田満、岸部一徳、吉田日出子と錚々たる顔ぶれが出演しているのだが、脚本と監督は山川元氏。
wikiによるとこの作品以来、監督作品はないみたいなのだが、山形出身の方らしく、震災後の4月に山形新聞のインタビューがあった。
なかでも
「作品は原発に賛成か反対かを問うているのではない。僕が描きたかったのは身近に恐怖が迫るまで反応しない、人間の無関心ぶりだ」
という言葉にはっとなった。

最近、私のお友達の何人かが、東京と大阪で市民投票を実現させようとがんばっている。
この投票の意味は、原発の是非を今すぐ決めようということだけじゃない。
「主権者が、原発の将来をどうするのかについて、直接の決定権を握るための国民投票を実現させることを目的として」いるということになっている。
私は、段階的に原発をなくす努力をしていくべきだという立場だけれど、一番恐ろしいのは、いろんなことが議論されないで決まっていくことだ。
原爆投下から10年も経ってない1954年に日本の国会で初めて原子力予算が上程され、可決されちゃったときみたいに。

ちなみにこの映画は、都知事の
「人間は過去のことはすぐ忘れる。終わったことには関心がない」
という言葉で終わる。
2011年に起きたことを忘れてしまうと、また重大なことが起きているのに気が付かない、なんてことになってしまうかもしれない、ということを考えさせてくれる映画だった。