2010年8月18日水曜日

映画「Restrepo」を見て考えたもろもろ

ちょっと前に「Restrepo」という映画をみてきた。
(このときにもブログ書こうと思ったのだが、怠慢で書かないまま時間が過ぎていた)
この映画を撮ったのは、ティム・ヘザーリントンとセバスチャン・ユンガー という2人組。
アフガニスタンのなかでもものすごく危険といわれる地域にある基地に暮らす兵士たちを追ったドキュメンタリーである。



セバスチャン・ユンガーは、ちょっと有名なジャーナリストで映画の原作にもなった「パーフェクト・ストーム」を書いた人。
ティム・ヘザーリントンは、ヴァニティ・フェアと契約しているフォトグラファー(本人は写真も映像も撮るのでこのレーベルをあまり好んでいないらしいのだが)で、これまで多くの紛争地域や戦地で暮らしてきた人。
私は友人の紹介で何年か前に知り合い、一度、この映画の製作中にインタビューしたこともある(このインタビューは、わけあって、まだどこにも出てないのですが)。
インタビューをしたときに、彼が言ったことでものすごく印象に残った言葉があった。
「戦争は悪い。
戦争は悪いけど、そこには極限的な状況だからこそ生まれる愛があったりする。
僕はそういう瞬間をとらえたい」

そうやって、それからしばらく経ってこの映画ができた。
そして今年の春サンダンス映画祭で審査員大賞ドキュメンタリー部門をとった。
今やっているプロジェクトにティムを誘いたかったこともあって、映画を見た直後にティムに会いってきた。

会って雑談をしていたら、ティムがこんなことを言う。
「右側から叩かれるのは想像してたけど、リベラルからもけっこう叩かれたよ。
戦争を悪として描いていていないからけしからんってね」
映画を見れば一目瞭然なのだが、この映画はアフガニスタンをめぐる政治論争とはまったく別の視点から撮られている。
そこにあるのは人間ドラマで、もちろん戦争がからんでいるわけだから、モラル論を退けることはできないけれど、特定の考え方を主張するために撮られた映画ではない。
それでもやっぱり叩かれちゃうんだなー。
「極端なリベラル主義者は、超タカ派の保守派と同じくらいクレージーだってことに気がついたよ」
納得である。
おかしいのは、ラッシュ・リンボウやグレン・ベックだけではないのですよ。

話はちょっと変わるが、先日、男友達とビールを飲んでいるときに、最近 The Atlantic に掲載されたある記事が話題にのぼった。
タイトルは「The Point of No Return」。
イランと核兵器とイスラエルとオバマ政権の話。
今、これを読むと、急にいろんな恐ろしい心配事が急に現実味を帯びてきて、ものすごく暗い気持ちになります。
ビールを飲みながら、いろいろと悪い事態のシナリオを話したりしていたときに、私が「そんなことになったら、もうすでいがっかりつくづくがっかりすると思う」
と言った。
そしたら男友達が、ちょっと意地悪な目をして、「そう?もうがっかりしてる?」と聞くでは「to some extent (ある程度は)」と答えると「何に?」というので
「医療改革とアフガニスタン」と答えたわけです。

ちなみにこの男友達は、圧倒的に白人の多い共和党支持基盤に育ち、しかも、自分の家族もそっちの方向だが、どういうわけか自分だけはそこに染まらず、パンクとチョムスキーから政治を学んで、実はアナーキストです、みたいなタイプである。

そしたら彼が言うではないですか。
「リベラルはさ、選挙のときにはグラスルーツで戸別訪問とかしてたけど、医療改革のためにもアフガニスタンのためにもほとんど動いてないよね〜。それじゃなんにも変わらないよね」

おっしゃるとおり。
選挙のときにあれだけ盛り上がったのに、ロックスターだった大統領がすっかり孤立したように見える今日この頃。
人間って勝手である。

「オレは、けっこうがんばってると思うけど、オバマ。最高裁の判事のメンツを見ろよ」
と友達。

もしかしたら、一番ダメなのは、選挙が終わったと同時に元の生活に戻っていった中途半端なオバマサポーターだったりして。
いや、きっとそうなんだろう。
って考えると、何かを動かしてるのは、ほんと一握りの、クレージーとすれすれの情熱のある人たちで、たとえば私なんかはその基地が今年の春に閉鎖されたことも「Restrepo」をみて初めて知ったくらいのダメっぷりである。
こういう人間が大多数だから、政治があるべき方向に進んでいかないんじゃないか!
というあまりに当たり前な事実に思い当ちゃった。
人任せにしても、何も動かない、ってことをもうちょっと考えないといけない気がしてきた。
これってきっと、ユニバーサルな政治が抱える問題なんではないでしょうか。