2010年7月8日木曜日

カリム・ラシッドが考える「デザインとアートの違い」

今月(っていっても6月だけど)も無事に校了しました。
今月楽しかったのは、ポール・セヴィニー(クロエの兄)のインタビュー(GQに出ます)や、カリム・ラシッドのお宅訪問(こちらはヴォーグに)。

カリム・ラシッドには、たまにインタビューなどでお会いする機会があるのですが、この人と会うのは本当に楽しい。
カリムのことは、ピンクのシャツ着てて、ピンクの商品ばかり作る派手なお人、もっというとちょっとキワモノ、と思っている人も多いと思うのだが、話をすると、すごく哲学的なお人であります。
今回はお宅訪問ということで、お家の話をひとしきりしたあと、雑談になった。

「最近、アートとデザインの境界が曖昧になってるってよく言うけど、僕はあの考え方は苦手なんだよね」
とおっしゃる。
「僕は自分のこと、デザイナーだと思っているけど、アーティストだって思ったことはないんだ。
デザインは、アジェンダがあって、依頼があって初めて成立する。依頼してくれる人がいなかったら僕は成立しない。アートに制約はないでしょう?
依頼があって成立するものと、自由に創作するものを、『境界線が曖昧』っておかしいよね?どっちがいいとか悪いとかじゃないんだけど、やってる側が、そこを見誤るのはどうかと思う」
って。
なんか、こういう意見、新鮮。
アートとデザイン、ファッションとアート、みたいなクロスオーバーがはやって久しいけれど、どれだけ境界線が曖昧になっても、スタート地点の違いはわかっておいたほうがいい気がします。

ちなみにカリムは、制約と依頼がある中でモノを作るのが好きなんだそうな。
カリムのワーカホリックぶりはちょっと知られたものであるが、今までデザインしたモノは3000個以上。
高い家具やインテリア小物も多いけれど、よくドラッグストアに売ってるMethodという洗剤のシリーズや、掃除機なんかもデザインしている。
「年をとってきたせいかもしれないけど、賞をもらったような商品より、スーパーに並んでいるようなモノに思い入れを感じるようになってきた。ものすごい田舎の普通の家庭で使われてると思うのが一番うれしい」
と言っていた。

そして、もうひとつカリムがストイックなところ。
それは「なるべく消費しない」ライフスタイルの実践なのだが、こちらは原稿に書いちゃったので、詳しくは月末に出るヴォーグで見てください。
私もやってみよう、と思ったけど、なかなか難しいのである。