2010年3月9日火曜日

The End of the Line

というわけで、新しいブログに引っ越して第一弾です。

ついでにウェブサイトもデザインしなおして、ここからブログもツイッターも見られるようにしてみました。

ここまでくるのにどれだけの時間がかかったことか。

(引っ越しにあたり、昔のエントリーを動かそうと思ったが、やろうとしているだけで頭が痛くなった。というわけで、放置することにした。あしからず)

さて、最近、海のドキュメンタリーが話題ですね。

「The Cove」とか「オーシャンズ」とか。

この2つの話題作は見ていないので、なんともコメントできないのだが、ここまでヒステリックな感じに騒がれているのを見ると、より見る気持ちが失せてしまう。本当はこういう職業なのだから、好き嫌いにかかわらず見たほうがいいのだろうと思うのではあるが。

それはそうと、また別の海の映画「The End of the Line」の上映会に行ってきた。

招待してくれたのは、時計ブランド「シャリオール」のコラリー・シャリオールさん。

SOHO HOUSEというセレブな(という言い方は嫌いなのだが、ここはあえて)会員制のホテルでの上映会だし、会場についてみると、有名ソーシャライツの姿も見 えるし、お金持ちが集まって社会派ドキュメンタリー見る会ですか、とちょっとナナメな感じでスクリーニングにのぞんだわけです。

シャリオールさんに挨拶すると、「実はこの映画はNOBUとか三菱商事を攻撃しているようにも受け取れるから、どう思うかしら」なんて言っている。

またかよ、な気分である。

が、映画が始まってみると同時にぐいぐいひきこまれてしまった私。

日本での公開は決まっていないようなので、決まった場合に備えて、詳細は差し控えるが、要は、人間が魚をものすごい勢いで釣っているので、魚が足りなくなっている、という話である。そして、魚の減るスピードは加速しているのだが、それに日本の食文化や世界中の寿司ブームが貢献しちゃっている、という話なのである。

社会派ドキュメンタリーにありがちな展開だが、上映の中盤あたりから、かなり悲観的な気持ちになってきた。

これ、どうやって落とし前つけるんですか、って。

が、この作品が良かったのは、「できること」を提示しているところであった。

できること、というのは、シンプルに、絶滅の危機に瀕している魚を食べない、ということである。

ドキュメンタリーの終わりに、Seafood Watchという団体が出しているリストが配られた。「Avoid」(食べるのを避けるべき魚、たとえばトロ)、「Good Alternatives」(まあ食べても大丈夫)、「Best Choices」(アワビ、いくら)などがリストされている。同じウニでもメイン州の周りではまずいが、カナダでは大丈夫とか、産地によって違ったりもする。iPhone アプリもダウンロードできる。

それを見ていて、5年くらい前に同じリストをもらったのを思い出した。それを見て私はチリ産のスズキを買うのをやめたのである。この団体は、かなり影響力が大きいらしく、聞いてみると、チリ産のスズキは、絶対的な危機的状況を免れたらしい。

そして今回のドキュメンタリーもイギリスでは反響が大きく、クロマグロを出さないレストランが相次いであらわれたという話もある。

もうひとつ好感がもてたのは、あまり政治的な匂いがしなかったこと、どこか特定の国や文化を非難したりするトーンじゃなかったこと。

さらに上映後のQ&Aで新しいことを学んだ。

最近、国際社会でちょっとした問題になっているソマリアの海賊船の話。

あれはもともと、ソマリアの政府が漁業権を海外の企業に売ってしまい、商売から閉め出されたソマリアの漁師たちが苦し紛れに漁船を乗っ取ってみた。そうしたら身代金がとれてしまったので、だったら誘拐すればいいんだ!と思ってしまった、と、誘拐専門になってしまったという話である。

海賊行為や誘拐を正当化するつもりはないが、物事にはだいたいある原因があって、それが思ってもみないような結果につながってしまうことがある。

そして、原因に直接的、間接的に貢献しちゃっている人たち(魚をとっている企業も、食べる私たちも)は、そんなことは考えもしないことのほうが多い。

私だって、トロは大好きである。

もう食べません、と宣言する勇気はない。

(ちなみに、マグロも地域によっては大丈夫だったりするらしいのだが)

でも、食べるときに、世界の反対側でこんなことが起きているのだ、ということはわかっていたほうがいいような気がする。

ニューヨークや東京やロンドンといった人口の多い都会では、流行りすたりが、モノの流通にものすごく大きなインパクトを与える。

大都会に住んでいる人間の一人一人が、そういうことをちょっとでも意識して生きると、何かが変わったりすることもあるのだろうと、珍しく前向きに考えながら、この夜は帰途についたのでした。

というわけで、トレーラーはこちら。