2012年9月26日水曜日

初めてプロレスに行ってきた

PERISCOPEがオープンしたよ、というお知らせのエントリーのあと、5ヶ月もブログを放置してしまいました。 ポパイのNY特集、フィガロのNY特集、そして文藝春秋の仕事でヒューストンのMDアンダーソンに行ったり、MITのメディア・ラボの伊藤穣一さんの密着取材に行ったりしているうちに夏が終わってしまった。

それはそうと、先日、初めてプロレスというものに行ってきた。 ニューヨークをベースに活動しているPeelanderZという日本人のバンドがあって、そこのイエローというお兄さんがいる。
(PeelanderZは、特にテキサスあたりでびっくりするような人気を誇っていて、先日もヒューストン出張中にひとりで音楽を聞きにでかけたら、バーに座っていた人が「PeelanderZがさあ」と話していたのをきっかけに知らない人と音楽の話で盛り上がった、というようなことがあった)

 そのイエロー兄さんが、アメリカの小さなプロレス団体が主催するイベントに巡業している日本人のプロレスラーがけっこういる、という話をしてくれたことがある。 アメリカのプロレスといえば、WWEが圧倒的な力を誇っているわけだが、ほかにも小さいリーグがあって、そこには映画「レスラー」を実地でいくようなドラマがごろごろ転がっている、という話だった。 それで、いつか連れていってやると言ってくれていたのが、ついに実現したのである。

 行った先はフィラデルフィア郊外のイートンという街。 高速脇の体育館のような場所である。チカラ・プロ(どうやらオーナーが日本のプロレスのファンらしい)というところが主催するイベントである。
ちょっぴり遅れて会場に入ると、すでに歓声のボリュームは最大限で、大変な盛り上がりようである。 そして見渡すかぎり白人ばかり。
それも、なんというか、NYではなかなかお目にかからないタイプの白人、うーん、体が大きい肉体系のみなさんが多いような印象である。
こういうみなさんを見ると、えっとこちらはアジア人ですけど、大丈夫ですか?と思ってしまうことがよくある。 差別まではいかないまでも、非白人慣れしてないがために、じろじろ見られたりするんじゃないかしらと構えてしまうのである。
しかし、3人対3人のマッチが8回あって、登場した日本人レスラーの数は10人くらい。
女性のレスラーもけっこう多くて、白人のファンたちが、彼女たちの名前を叫んだりしている。 私の後ろの席では、若い白人の男の子が「おれ、彼女のDVD持ってるぜ」なんて友達に自慢してたりして。 休憩時間になると、リングを降りたレスラーたちが、グッズを売ったり、サインをねだられたり、ファンと話したりしている。 こんな白人ばかりの地域で、こんなローカルレベルの国際交流が起きているのを見たら、なんだかとても温かい気持ちになった。
写真はコミカルな動きで会場をわかせていた日本人のレスラーのお兄さんたち。

 これまでプロレスというものに興味をもったことはほとんどなかった。 素人考えながら、なんか筋書きが決まっている印象を受けていて、だからかもしれない。
最近、スポーツというものにげんなりすることが増えていた。 ドーピング疑惑について読むたびに、もちろん個々の選手の責任もあるだろうけれど、資本主義のものすごく極端な側面をみるような気がして、それがスポーツ本来の美しさを汚しているような気がしてすっかり萎えてしまったのである。
そんなときに体験した初めてのプロレスはとても新鮮であった。 アメリカ人の巨大な男性レスラーたちと、私よりも小さいくらいの日本人の女子レスラーたちが対戦したりしている。 厳密な意味での「試合」では、もちろん、ない。
でもそのぶん鍛えぬかれた肉体をふんだんに使ったエンターテイメントとして、余計なことを考えずに楽しむことができるのかもしれない。
行くまでは、何時間もプロレスなんて退屈しないかなと思っていたけど、約5時間、心底楽しい体験をさせていただいた。

ちなみにイエロー兄さんは、ここでも若い白人の男子たちに「一緒に写真撮ってください」なんてねだられてすっかり人気者であった。 イエローさん、まだまだ自分の知らない世界がある、と思い出させてくれた貴重な夜をありがとう。